諸葛孔明が南征中、賊の首領の一人猛獲に注目した。猛獲は、蛮族だけでなく漢人にも人望があることが分かった。
孔明は猛獲を捕らえたものには賞金を出すことを布告した。やがて捕らえられた猛獲を従えて、孔明は陣営内を巡って「この軍をどうみたか」と問うた。「このまえは陣の虚実を知らなかったから敗れたが、今度は看させてもらったのでたやすく勝てるでしょう」と猛獲は豪語した。
孔明は笑って猛獲を釈放した。
やがて猛獲が、孔明の陣営を攻めてきた。が、これを予測していた孔明は、やすやすと猛獲を捕らえた。「わが陣営のすべてを見せた筈だが」「この次は必ず勝ちます。」「それなら・・・」孔明は笑って、また猛獲を還らせた。
孔明は、猛獲を七回捕らえ、そして七回縄を解いた。七縦七擒である。すると今回は猛獲は、座ったまま去らなかった。
「還ってわれと戦うべし」「公には天の威光があり、もう誰も南人は叛くことはないでしょう」と答えた。
やがて孔明の徳量の大きさを知った南部の有力者や実力者は、つぎつぎに順服して、ほぼ南部の平定は終わった。
「心を攻めるを上策、城を攻めるは下策」と、かって馬謖が「孫子」を語ったが、徳が武にまさる策戦を孔明は果たして大きな成果をあげた。
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