善住寺さんの法要
昨日6月12日は谷岡家の13回忌、50回忌の法要を善住寺のご住職さんに取り計らっていただきました。
久しぶりに親戚が集まり、故人の昔話などに花が咲きました。
善住寺のコウジュンさんの凛とした涼やかな声のお経を聞いていると心が落ち着いてきます。凛と響くお経に、瞑想状態へ誘われます。
法事の後の会食は当家で用意しました。
コウジュンさんのお話し/般若心経の意味とは
法要の終わりにコウジュンさんがとても良いお話をして下さいました。
真言宗のおつとめの御経は主に般若心経で、その意味もわからず私たちは唱えているわけですが、その意味はかみ砕いて言うと
「人の人生の価値、苦しみや災難は相対的なもので、視点を変えれば苦しみも価値のあるものに変わる、人生は自分の視方次第で変わるものなんだよ」
というお話をして下さいました。
般若心経は、西遊記の三蔵法師がインドの天竺へ経典を求めて旅する間、災苦から守ってくれるお経であったと。
さらに続けて
「指を胸の前に立ててくるくると右回りに回してください。それをそのまま目の上まで持っていくと…右回りが左回りに変わっています。世の中というのはこういうものなんです」
というお話をされました。
今なぜ自分だけが苦しいのかと、災難にあるのかと悩める人も視方を変えれば
そこから抜け出せるきっかけになるかもしれない。
とても心にしみるよいお話しでした。
やはり仏教の法要とは、故人を思うためなのはもちろん、今生きている私たちのためにもあるのだと感じました。
円の内と外/「君が決めるんだ」
コウジュンさんのお話を聞いていて思い出した作家の言葉があります。
森博嗣さんの『笑わない数学者』の中でこういう場面があります。
老いた数学者が少女に
「地面に描かれた円の中心にいて、円をまたがずに円の外に出られるかな」
と問いかける。
数学者は
「円の円周を拡大していけば、地球は球体なので赤道面の円周を超えると円は縮小していく。よって、またがずに外に出られる」と教える。
さらに少女に「では君がいるのは円の外だろうか、中だろうか?」と問いかける。
「ねえ、外と中はどうやって決めるの?」
お爺さんは片目を瞑る。
そして、ベンチに戻って、腰を掛ける。 座るとき、白いベレー帽が地面に落ちた。
お爺さんの髪は真っ白だった。
「ねえ、どちらが中なの?」 少女がもう一度きく。
お爺さんは帽子を拾い上げてから、少女に言った。
「君が決めるんだ」
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左右の定義の相対性/色即是空
左右というのは相対的なものですから、観察者の視点を基準に決まります。
渦巻きの蚊取り線香を裏返せば、渦巻きの向きは反対になりますね。
右か左か、円の境界の外か内か、決めるのは観察者の視点がどこにあるかです。
つまり、「君が決めるんだ」
またまた森博嗣『笑わない数学者』より引用
「ひとつ面白いお話をしましょう」犀川が萩原を無視して話し始めた。「鏡に映った像は、左右が反対になりますね。どうして、上下や前後は逆にならないで、左右だけ入れ替わるのか・・・・・・。刑事さん、答えられますか?」
「い、いや…」萩原は先生に当てられた学生のように慌てた。「それはですね、つまり……。その……、いや、確かに、そういえば……、どうしてですか?」
「定義の問題です。左右だけが、定義が絶対的でないからです。上下の定義は空と地面、あるいは人間なら頭と足で定義されます。前後も、顔と背中で定義できます。では、左右はどうでしょう?左右の定義は、上下と前後が定まったときに初めて決まるんです。人間の体型が左右対称ですし、歩いたりするときも横には動きません。上下と前後の定義が独立していて、絶対的なものであるのに対して、左と右の定義は相対的です。この定義のために、鏡で左と右が入れ替わるんですよ」
般若心経の中の「色即是空」という言葉もこの流れに当てはまる意味だと思います。専門家ではないので正確ではないかもしれませんが、個人的にはこのように捉えています。
色、つまり私達が知覚し認識している世界の事象(観念)はある「形」をなして現れるが、それは空つまり、認識とは無関係な実在(本質)であると。
私たちは世界の実在(本質)を観念を通して「形」をはめることでしか知りえない。
世界とは相対的なもの・・・心が澄み渡る言葉を大事にしていきたいものです。
善住寺のコウジュンさんは素敵なブログも書かれています。ぜひ一度ご訪問してみてください。
良い法要をありがとうございました。
追記:コウジュンさんのブログで澄風荘を紹介して頂きました!
過去の善住寺さんの記事はこちら