吹雪の槍で遭難か 加藤文太郎のことその3 

まんじりともしない長い夜が更けて六日の早朝、「花ちゃん今帰ったよ」と、言う夫文太郎の弱々しい声を花子さんは微睡みの中で聞きました。 「元気か?あんたさえ元気ならそれでいい」「ああ、やっと無事に帰ってきてくれた」と、思った途端、隣に寝ていた登志子ちゃんの泣き声で目が覚めました。 益々不安が募り、夜が明…