【追記】誤解を招く表現をしていたため、タイトルを変更しました。
アパホテルが客室においていた書籍の件で、中国で炎上しましたが、人数はともかく南京大虐殺を「全否定」する内容の書籍を本を「全室」に設置するのは旅館業法の趣旨に反すると考えます。
アパホテルが南京大虐殺否定本、中国SNSで炎上⇨同社は「客室から撤去しない」【UPDATE】
南京大虐殺を否定する書籍を全部屋に置く「アパホテル」が話題になっています。
ところで、旅館業法施行令の第3条は、「善良の風俗が害されるような文書」を備え置くことを禁止しています。たとえば、ヘイトスピーチを助長する書籍を全部屋に置くホテルは、旅館業法施行令に違反します。 pic.twitter.com/GezysPt6w1
— 大前 治 (弁護士) (@o_omae) 2017年1月17日
このツイートのように アパホテルの書籍が直接ヘイトスピーチだと考えている訳ではないですが、書籍の内容は「南京大虐殺は中国人のでっち上げだ」というヘイトスピーチを助長することになるかもしれません。
ホロコースト否認がヘイトスピーチであるように、「南京大虐殺は中国人のでっち上げだ」と言うのはヘイトスピーチだと思います
ここでは南京大虐殺の正否について述べませんが、全く事実がなかったということはあり得ないというのが一般的な見解です。
アパホテルがこうした書籍を客室に置くのは直接旅館業法(施行令)違反だという訳ではないと思うのですが、旅館業法の趣旨には反していると考えます。
旅館業法第5条
営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。
一 宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかつていると明らかに認められるとき。
二 宿泊しようとする者がとばく、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。
三 宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき。
宿泊業は完全な「自由契約」は出来ません。差別に基いて宿泊拒否をできないという旅館業法の条文は、宿泊業がある種の「公共性」を有していることを意味します。アパホテルは宿泊拒否はせず、受け入れてお金をもらっているので旅館業法違反ではありませんが、特定の外国人を政治的に攻撃しヘイトスピーチを助長する書籍を客室に置くことは、旅館業法の「差別をしない」「公共性」の趣旨に反していると考えます。
私企業だから政治的主張をするのは自由なのか
この問題に関して、私企業であるアパホテルがどんな政治的主張をしようと自由だという意見があります。まあ確かにそうで、それで中国市場で淘汰されようと自由なんですけどね。
ただ社長がどういう主張をしようと自由なんですけど、それを客室に全室設置するのはおかしいと思います。社長や会長の政治的主張に企業として、またアパホテルで働いている社員やホテル従業員、出入りの委託契約の従業員(ホテルの清掃や接客業務はおそらく外部委託が多いはず)まで同じ主張をしている、「南京大虐殺全否定」に同意していると思われてしまいます。
社長の政治的信条に社員や外部スタッフを巻き込むのはどうなのか。
やはりここでも「公共性」の問題にぶつかります。アパホテル社長の自宅に大量に例の書籍があっても問題ではありませんが、ホテルの客室に置くのは企業として問題だと思います。
【追記】アパホテルは一私企業として書籍の客室設置は問題ないと判断しているので、撤去を強制することはできません。但し、書籍の内容や設置措置について批判をするのも自由です。もちろんこの記事に対して批判するのも自由ですよ。議論はあるべきです。
追記:1/26 タイトルが誤解を招く表現であったため修正しました。最初に記事を読んだ方にお詫び申し上げます。
ポリティカル・コレクトネスについて思うこと
まあ日本にいる人ならアパホテルが「アレ」なのは周知されているので、今回の件で海外にも周知できて、利用者側も選択の自由ができたと言えるかもしれません。
但しこのアパホテルの書籍の主張をおかしいと言うことは「ポリティカル・コレクトネスの行き過ぎではありません」。
荻上チキさんがラジオで仰っていましたが、「PCは全然実現していません」。PCは偏見や差別を是正しバランスを取るためにあるのであって、差別やヘイトスピーチはなくなっていないのにPCの行き過ぎも何もありません。
PCを他者の攻撃材料にしてはいけませんが、悪い状態を良くするために「努力をする」ことは行き過ぎではないと思います。建前ではなく本音でPCは実現すべきだと思います。