はまさか日記~澄風荘しょうふうそう~

兵庫県浜坂温泉・カニソムリエの宿・澄風荘の主人・スタッフが、但馬の文化や歴史、山陰海岸ジオパークのPR、浜坂の四季折々の魅力をお伝えしていきます。

宮本輝『海岸列車』を山陰本線に乗りながら読む/旧餘部鉄橋「空の駅」

宮本輝『海岸列車』

兵庫県神戸市生まれで神戸市在住の作家宮本輝氏の1989年の作品に『海岸列車』という長編小説があります。

海岸列車というのは、城崎から「鎧駅」にいたる山陰本線を走る各駅停車の列車のことです。

鎧駅というのは餘部駅と香住駅の間にある無人駅です。

山間部を通りトンネルが多いため、海が見えたと思ったらすぐトンネルに入り、また海が見えたと思ったらトンネルに入るというこの山陰線の様子を、明るい海と暗いトンネルが交錯する”人生の縮図”のようだと作中で喩えた言葉です。

幼くして母と生き別れ、育ての親の伯父の急死によりモスクラブという大きな会員制クラブの会長になった手塚かおりと、その兄夏彦の、仕事や恋愛を通した成長物語です。

当時のバブル景気に湧く世間にシニカルな批判を加えつつ、人の生の華やかさとの寂寥感を描いた物語だと思います。

この中に出てくる「私利私欲を憎め。 私利私欲のための権力とそれを為さんとする者たちと闘え」という言葉が強く心に残りました。

手塚かおりと夏彦の兄弟は、生き別れた母の住む「鎧駅」を心の拠り所としています。鎧駅は無人駅で何とも言えない情緒がある秘境駅です。

実際に「海岸列車」に揺られながら読むと、主人公たちがなぜ「鎧駅」を心の拠り所にしたかわかるような気がしました。

『草原の椅子』以降はあまり読まなくなりましたが、宮本輝作品はほとんど読んでいます。『海岸列車』は宮本輝の初期~中期の傑作の一つですね。文庫で全2巻です。

海岸列車 (上) (集英社文庫)

海岸列車 (上) (集英社文庫)

 
海岸列車 (下) (集英社文庫)

海岸列車 (下) (集英社文庫)

 

旧餘部鉄橋「空の駅」

鉄道好きの方には有名な餘部鉄橋のあった餘部駅は浜坂駅から2つ目の駅です。

餘部鉄橋は現在「空の駅」として”空を歩くように”日本海の絶景が楽しめます。

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来秋にはエレべーターが設置されることになり、今年の10月には安全祈願祭が行われました。

JR豊岡駅から浜坂方面行く途中に餘部駅はありますので、浜坂へお越しになる途中に余部駅からの眺めが見られます。

浜坂方面へお越しになる際は、ぜひ山陰本線の風景をお楽しみください。