暇を見つけて書店に寄ってみた。単独行の文庫本が山と渓谷社から出版されていて、気軽に読んでいだけるようになったと嬉しくなる。そして、その横には孤高の人の文庫本も並べられている。昨年9月には谷甲州先生が単独行者を同じく山と渓谷社から出版。また、コミック誌では坂本眞一氏の孤高の人を原案にした加藤文太郎ものが大きな話題を呼んでいるという。
ちょっとした加藤文太郎ブームかなと少し嬉しい気もするが、ただ無念だったのは、木村大作監督の孤高の人の映画化構想が途中で頓挫したことである。
加藤文太郎ものであれば、厳冬期の雪山のシーンが多く、八甲田山や劔岳点の記の比でなく撮影が困難を極めるとの理由であるらしい。
ところが、それまで山岳小説家と文壇から言われていた新田次郎が人間を描ける作家と初めて評価を受けるようになったのがこの孤高の人である。(新田次郎氏夫人藤原てい氏の談)孤高の人は、ただの山男の人生を描いただけの作品でない、山を通した人間ドラマだっただけに残念である。