アケビの思い出
昨日行った道の駅「風の家」でアケビをひと蔓買った。子供の頃、実りの秋の楽しみのひとつがこのアケビだった。この季節になると、川沿いの山に分け入って蔓状の茎が雑木に絡みつき、伸びたその先にバナナに似た状態でアケビは実を付けていた。
皮は薄紫色をしており、完熟すると縦に割れて甘い香りをした果実が露出する。この甘い胎座と呼ばれる果実を口いっぱいに頬張り、中に含まれた黒い点々とした種子だけを吐き捨てる。
秋の一番初めの収穫がこのアケビで、その次が柴栗の実を栗ご飯や茹でて食べた。続いて柿の実が赤く色づいて、今度は柿の木によじ登る。
柿の収穫の期間は割と長く、私たち子供の腹を一番満たしてくれた。それと同時に収穫されるのがサツマイモであるが、これを食べるのは柿の実が全てなくなってからだった。
合わせ柿の魔法
晩秋になると、祖母が渋柿の皮を剥いて軒下に吊るす。これも今では晩秋の風物詩なのかもしれないが、その頃はそんな情緒な気分にはなれなかった。
また、まだ渋い柿を焼酎の入った壺に入れて(合わせ柿)、数日すると甘い柿が出てきたのには驚きで、祖母が魔法使いのおばあさんに見えた気がした。
やがて白い雨が降り始める頃になると、毎夜栃の皮むきの手伝いで、この駄賃が軒下に吊るして甘くなった干し柿だった。
そして、元旦を迎えた朝にひとつのミカンを食する事ができた。あの頃は、ミカンは1年の内でこのひとつだった時代だったことを思い出す。