ホテル・旅館と民宿の違いについて、どう違うのかご質問をいただいたことがあります。ホテルと旅館はなんとなく違いはわかりますが、旅館と民宿ってどう違うのかよくわからないですよね。今回は旅館業法の営業の違いや実際のサービスの特色の違いについてまとめました。また民泊との関連についても私見を書きました。
旅館業法での違い
「旅館と民宿ってどう違うの?」という結論から言えば、
- ホテル営業 ホテルは洋室の設備を設け部屋数が10室以上、1室の床面積が9平方メートル以上、部屋及び窓に鍵が掛けられること、適当な数の洋式浴室又はシャワー室を有し、洗面設備、適度な数のトイレがあることが定められています。ホテルは旅行者が快適に過ごせる設備を重視しています。 料理込み宿泊プランも日本では多いですが、基本は宿泊のみで料金設定されています。
- 旅館営業 和式の構造及び設備を主とする施設を設け、部屋の数が5室以上、1室の床面積が7平方メートル以上であること、入浴設備や洗面設備、適度な数のトイレがあることが定められています。旅館は一般に一泊二食込みの宿泊料金を設定されており、泊まるだけでなく和風の建物の中で料理や温泉を楽しむことを目的として選ばれることが多いです。
- 簡易宿所営業 ゲストハウスや民宿は基本ここに入ります。客室の延床面積は33平方メートル以上であること(10人未満の場合は1人あたり3.3平方メートル以上)、浴設備や洗面設備、適度な数のトイレがあることが定められています。簡易宿所は宿泊する場所を多数人で共用する施設とされ、一部屋に何人かが相部屋で泊まることが多いです。
- 下宿営業 一ヶ月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて人を宿泊させる営業のことです。月極では部屋を間借りする下宿施設です。
近年、旅館と民宿の境目はなくなってきた
一般に「民宿」と看板に掲げている宿は、旅館業法の申請では旅館として営業されていることが多いです。旅館業法の申請とは関係なく、施設名に「ホテル」「旅館」「民宿」と名乗ることは自由だからです。部屋数が少ない小規模施設ではイメージとして「民宿」としています。澄風荘も旅館業法では旅館ですが、一般に「民宿」として認知されています。
民宿は元々は漁師さんや農家が季節営業として兼業で宿泊業を営む形態が多くありました。家族経営で素朴な接客サービス、専門の漁や農業を活かし地元の新鮮な食材を用いた料理が魅力です。宿泊料金も旅館より低価格でリーズナブル。
最近は兼業ではなく専業で旅館業を営む施設も、こうした民宿のイメージを大事にし「民宿」と名乗っていることが多いのです。料金や設備規模の違い以外で、旅館と民宿の違いはあまりなくなったと言えるでしょう。
旅館や民宿は宿のスタッフがお客様とお話したり接する時間が多く、地域に密着した情報が得られたり地元ならでは旅行体験を得ることができます。
ホテルは一般に洋式のお部屋で寝具もベッド、快適に寝泊まりすることが求められています。料理を一品ずつ運んだりすることはないため、お客様と接する時間は長くありません。宿泊先として快適に過ごせることがホテルの魅力です。
民泊とは
民泊=違法ではない
民泊というのはよくニュースで取り上げられているのでご存知の方も多いですが、住宅を活用して宿泊サービスを提供することです。旅館業法の適用を受け、簡易宿所営業の許可を得ている場合や一部国家戦略特別区域指定で認めらた特区民泊やイベント民泊は合法です。
ニュースなどで問題となっているのは普通のマンションの一室を無許可で宿泊サービスに使っている違法民泊ですね。民泊といっても合法にきちんと営業されている方もいらっしゃるので民泊=違法ではないことに注意しましょう。
民泊ビジネスを始めるには最低限の設備投資が要るが…
旅館業法の一部が改正され、簡易宿所に関して「33㎡以上を求める」構造設備基準が緩和されたりフロントの設置義務が緩和され簡易宿所の営業許可は取りやすくなりました。また民泊新法の制定も予定されています。
民泊の場合も営業施設の面積によっては消防用設備が必要となります。こうした設備を整えたりまた保健所に旅館業法の営業許可を申請すること自体を厭い、旅館業法を「民泊を妨げる古臭い法律」だとして批判している民泊推奨者の意見を見たことがありますが、それはちょっとおかしいと思います。
快適で安全な宿泊サービスを提供するために
旅館業法は旅館業者の利益を守るための法律ではありません。旅館業法の所轄官庁は、厚生労働省です。公益性を担保し、宿泊者の安全と健康を守るために制定されています。
どんなビジネスも設備コストはかかります。旅行者と交流をしたいのなら宿泊料を設けず無料で招待すれば良いと思います。そもそもなぜ違法の状態でビジネスを開始しようとするのか理解できません。保健所の営業許可の無い飲食店で食べたいとは思いませんよね。
旅行業界全体のことを思うと、きちんと営業許可を得た民泊が増え宿泊施設が多様化し、旅行者の選択肢が増えるのは良いことです。
澄風荘も民家を改築して開業したので、申請や設備投資が大変なのはわかります。
民泊がゲストハウスや民宿のように浸透するでしょうか。旅行業界も日々変わりますね。でも変わらない良さも大事にしていきたいと思います。