山の日制定と加藤文太郎
山の日は2014年に制定が決まり、今年8月11日に初めて施行される国民の祝日です。
大正の終わりから昭和の初期にかけて、日本の山々をたった一人で駆け巡った加藤文太郎と言う一人の青年がおりました。
まだ、登山が一部のブルジョア階級や裕福な子弟の大学生だけのものだった時代、加藤文太郎は真冬の日本アルプスに単独で挑み、而も自分で創意工夫した装備を駆使して、韋駄天のごとく雪山を次々と走破していきました。
その文太郎が、初めて吉田富久と組んだパーティで、冬の槍ケ岳北鎌尾根に不帰の客となったのが1936年1月。
それから月日が経過して、節目の没80年の本年、奇しくも山の日が施行されことになったのは何かの巡り合わせでしょうか。
加藤文太郎は、明治38年3月11日新温泉町浜坂に生まれ、浜坂尋常高等小学校を卒業後、神戸の三菱内燃所(現三菱造船所)の製図修習生として勤務しました。
明治から当時にかけて外国人の居住者が多い神戸は、その影響で六甲山を中心に沢山の人々が山歩きを楽しむ文化がありました。
やがて文太郎も誘われて山歩きをするようになり、昭和二年ごろから藤木九三氏の主催するRCCに入会して、そこで本格的登山に傾倒するようになりました。
彼は冬山の日本アルプスを単独で駆け巡り、不死身の加藤と異名をとるようになってからも、多くの山仲間に但馬の山々を紹介し、扇ノ山や氷ノ山、蘇武ヶ岳などにたびたび同行しておりました。
そしてこれらの山々を兵庫アルプスと呼び、氷ノ山を兵庫槍ヶ岳、扇ノ山(大ズッコ)を兵庫立山などと命名して、故郷をこよなく愛し、これらの山や自然は彼が心の安寧を求める存在でありました。
加藤文太郎が遺した「単独行」は、山行者の永遠のベストセラーで、山のバイブルとして、今でも高く評価されております。彼の生涯を劇的に描いた新田次郎の小説「孤高の人」は、山に行かない人々にも広く愛読されました。
私家版加藤文太郎遺稿集「単独行」
また、最近著作された谷甲州の小説「単独行者」は、出来るだけ史実に基づいて描かれており、少しでも本当の加藤文太郎像に近づくことのできる名作です。
坂本眞一氏のコミック「孤高の人」は、最近の若いファン層を獲得することになりました。
孤高の人【期間限定無料】 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 坂本眞一,鍋田吉郎,新田次郎
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魚付き林と里山づくり
新温泉町は、海・山・温泉の町を標榜しておりますが、海は漁業資源の枯渇が大変心配されおり、山は保水力のある広葉樹林が荒れ果て、山の動物と人間の棲み分けが上手く出来ない状況で、鳥獣被害だけを叫ぶのは人間側のエゴだというのは少し言いすぎでしょうか。
保水力を失った山から流れる川は、今は昔の姿はありません。
大水の毎に、田君川の流失される天然記念物の梅花藻は、大変痛々しいものがあります。
魚付き林と言う言葉がありますが、豊かな森のそばの海には多くの魚貝類が棲みつくそうです。
昔から、漁業者の間には、海岸近くの森林が魚を寄せるという伝承があり、そのため海岸林や離れ小島の森林を守って来た歴史がある。そのような森林を魚つき林という(※科学的な根拠、因果関係は明らかにされていない)
観光は、新温泉町の経済の一翼を担う事業であり、海・山・里の自然の恵みは、私たちの大切な観光資源です。
松葉かになど多くの海の幸を私たちは享受しています。
また、栃・楢・ブナなどの木の実は森に棲む小動物と人間がシェアすべきで、そのほかの山菜等山・里の幸も観光資源として活用しています。(栃餅は我が町を代表する土産物です。)
したがって、これらの資源を育み、提供してくれる自然界こそ私たちが畏敬の念を抱く対象物ではないでしょうか。
「深き谷間に湧きいれて 行くすえ広き海原の 源なす○○川に」という、今は無き小学校校歌がありました。
豊饒の海、清らかな川の流れの源は、保水力のある広葉樹林であり、循環型の豊かな里山づくりこそ観光の礎であって、今、私たち人間が自然界に手を差しのべる時だと考えます。
山の日の制定に因んで 海の日と山の日 イベント
本年の山の日制定に因み、植樹会やウォーキング等の加藤文太郎のメモリアル事業とともに様々な活動計画が考えられます。
新温泉町は、7月の海の日から始まり、8月の山の日にかけて一連の流れのあるイベントを考えては如何でしょうか。
幸い海の日は、浜坂で歴史ある「川下まつり」があり、盛大な花火大会が行われます。
そこで山の日には豊かな森づくりを目指した植樹など、私たちが自然環境を護り育てる啓発活動は時宜を得たことではないでしょうか。
新温泉町 海の日と山の日イベント案
1.扇ノ山・上山周辺を中心とした栃の木、楢の木、ブナの木等の植樹
2.小中学生、一般住民、観光業者、漁業者、漁業者等の山を知る学習会
3.山・渓谷の写真、絵画展等の開催
4.加藤文太郎の案内板の整備
5.その他
第2回 浜坂三山縦走大会
今年の10月23日には、第2回 浜坂三山縦走大会が行われます。
「山の日」制定と、加藤文太郎没後80年を記念して、浜坂三山(観音山、城山、千々見山)を縦走する大会です。
孤高の登山家・加藤文太郎のふるさとの山々を文太郎の足跡を訪ねながら歩くイベントです。詳細は浜坂観光協会ブログ
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