カジュアルワイド版『殷周伝説』
横山光輝さんの『殷周伝説』のコンビニ本(カジュアルワイド)を読みました。
中国の伝奇小説『封神演義』を元に、殷代末から殷の滅亡、周建国までが描かれる漫画作品です。
最終巻刊行後に横山先生が亡くなられてしまったので、次回作への構想もあったそうですが、これが遺作となってしまいました。
元々は単行本で集めていたのですが、新刊ではなかなか見つからなかったので途中で止まっていました。最近コンビニ本がでたことを知り、少しずつ集めて行きたいと思います。
WEBコミックトム:カジュアルワイド版・横山光輝「殷周伝説」
ネット通販で買えるコミックスはコンビニ本ではないです。
潮出版社のコミックスの魅力
潮出版社というとちょっとアレ…なイメージもありますが、横山光輝や手塚治虫といった漫画界の巨匠の作品を出版されている老舗であります。上記の『殷周伝説』も潮出版社です。
古典名作が多い潮出版社のコミックスの中で、個人的なおすすめの作品をご紹介したいと思います。
手塚治虫『ブッダ』
手塚治虫が人間としての釈迦、シッダルタを描く物語です。
王子であるゴータマ・シッダルタはクシャトリヤの身分として、何不自由のない生活を送っていたが、生と死、身分の差があることの不条理の疑問を常に抱えていた…。
当たり前の価値観の転換を読者に突き付けるのは手塚治虫お得意のテーマですね。
『聖☆おにいさん 』のブッダも絶賛の手塚治虫版『ブッダ』です(笑)
山岸凉子スペシャルセレクション 『天人唐草』
『日出処の天子』『テレプシコーラ』で有名な山岸凉子さんの短編を集めたシリーズ。
山岸さんの短編といえば怖いホラーのイメージがありますが、何が怖いって人の心の闇を覗き見る怖さなんですよね。
このシリーズで一番売れたと言われる『天人唐草』では、主人公は真面目で潔癖な若い女性岡村響子の悲劇です。
子供の頃響子が「イヌフグリ」の花をかわいいと思い親に「イヌフグリってなあに?」と尋ねると頭ごなしに「女の子がそんな言葉を口にするんじゃない!はしたない!天人唐草と言いなさい」と怒られてしまう。
性的に抑圧された教育を受け、凝り固まった価値観でガチガチに縛られた響子は、自分の気持ちを素直に表現できず、他人の目を異常に気にして失敗することを恐れるようになる。
同僚に「見栄っ張り」と指摘されたときに、自分に気付いて客観視するようになれば変わるチャンスもあったが、響子は深く考えることから逃げてしまい、価値観と現実の乖離に壊れて最後は発狂してしまう…。
恥をかくのが嫌で深く考えることから逃げた罰かのように、痛ましいラストを作者は与えていますが、こういう部分は人間誰でもあると思います。
人間の深淵を描く山岸凉子さんの手腕が光る短編を集めたこの潮出版社のシリーズは読み応えたっぷりです。
山岸凉子さんは現在『モーニング』でジャンヌ・ダルクを主人公とした『レベレーション(啓示)』を隔月連載中ですがこちらも続刊が楽しみです。
潮出版社のコミックスで個人的に好きな作品について書きました。
殷周伝説は全巻読み通したらまた感想を書きたいと思います。